マーケティング戦略プロセス — 作る前に考えること
00要約Overview
01動機Why
マーケティングという言葉は、あまりにも一般的になった。広告を出すこと、SNS で宣伝すること、SEO をすること — 多くの人は、それらをマーケティングだと思っている。しかし、それらは商品が完成した後の話である。マーケティングは、そのもっと前から始まる。
昔は「良いものを作れば売れる」という考え方だった。これは間違いではない。世界で一番良いプロダクトなら、おそらく何もしなくても売れる。モータースポーツでも同じで、速くても F1 に行けなかったドライバーは大勢いる。でも、ズバ抜けて速くて F1 に乗れなかった者は、ただの一人もいない。ズバ抜けた性能のアプリなら、何もせずとも売れる。
ただ、現実の多くのプロダクトは「良いプロダクト」である。そして、良いプロダクトだけでは売れない。世界で一番高い山はと聞けば、みんながエベレストと答える。では 2 番目は? エベレスト 8,848m、K2 8,611m、カンチェンジュンガ 8,586m。高さの差はわずかだが、知名度も売上も、まったく違う。
世界には、同じように良いプロダクトが数多くある。だから 何を作るか、を先に考える 必要がある。「良い物を作る → 売れる」ではなく、「売れるものを考える → 作る」へ。順番が変わった。これがマーケティングという考え方である。
02方法How
ここで大事なのは、製品 (機能) から考えないことである。マーケティング近視眼 (Marketing Myopia) が指摘するように、自社製品を売ることに意識が向きすぎると、顧客が本当に求めている価値を見失う。人が欲しいのはドリルではなく穴。航空会社を「飛行機を飛ばす会社」と定義すれば競合は航空会社だけだが、「遠隔地を繋ぐサービス」と定義すれば Zoom も競合になり、「知らない場所で感動を届けるサービス」と定義すれば映画や VR も競合になる。競合は製品ではなく、提供する価値で決まる。
では、その価値はどう見つけるのか。誰にでも「売れる商品」が分かるなら、マーケティングという学問は要らない。分からないからこそ、Research (市場を理解する) と STP (誰に何の価値を届けるか決める) を往復する。
# 企画・構想フェーズのループ
Research ⇄ STP
↓
Value Proposition
Research と STP は一度で終わらない。競合を見つければ Research に戻り、ターゲットを変えれば STP をやり直す。このループを何度も回す。市場を理解する Research は 3.1.1、それを分析して意思決定する STP は 3.1.2 で書く。
03価値What
戦略プロセスの成果物は、商品ではない。
「何を作るべきか」という、意思決定である。
誰を助けるのか。どんな価値を届けるのか。なぜ選ばれるのか。ここまで決まって、初めて設計・開発へ進む。この工程を飛ばすと「何を作ればいいか分からない」状態になり、技術から、機能から、使いたい AI やライブラリから考え始めてしまう。しかしそれらは手段である。マーケティングは、100% 売れる商品を作る学問ではない。成功する確率を高める学問である。